―――ジリリリリジリリリリ

朝。布団から飛び起きてあたりを見回す。

「…!はあはあ……夢?」

そう言って部屋に鳴り響く目覚まし時計のベルを切った。

ふと、頬に生暖かい感覚がしたと思い、頬に触れると手が少し濡れた。
その水を伝っていくと、目からだということを理解する。

「あれ……私、泣いてる……?」

それは涙だった。

なんで?……というか、どうして今頃昔の夢なんか……。
私は……私は……。

心の中で疑問と不安が舞い踊る。

「もういいや……」

そう言ってベッドから飛び降りると、すぐに洗面所に向かう。

冷たい水でバシャバシャと顔を洗って気持ちをリセットする。

タオルで顔を拭いて口も軽くゆすいだ。

リビングに向かうと、そこには名衣と名緒がいた。

「メイ、ナオ、おはよう!」

私がそう言うと、名衣と名緒が声を揃えて「おはよう~!」と返してくれる。

かわいくてつい頬が緩む。
二人といるといつも楽しくて、気持ちが柔らかく、楽になるんだ。

「絃ちゃん、おはよう」

二人と話していると、目をこすりながらリビングに入ってきた母がそう言う。

「メイちゃんもナオちゃんもおはよう」

「「おはよう~!」」

母は続いて弟妹にもそう言い、二人も私に返してくれた時と同じように母にそう返した。

「絃ちゃん。今日から少しずつオーディションに向けて準備するから、朝ご飯食べたらすぐに出かけられる準備をしておいて頂戴ね」

母がニッコリと笑いながらそう言う。

私は母のこの取り繕ったような安っぽい笑い方が好きじゃない。

「……ん」

私はそっけなくそう返事して、大好きな弟妹に視線を戻し会話を再開させる。

「お姉ちゃん聞いてよ。私が起きたらナオがが床に落ちてたの!寝相悪すぎ~」

意地悪に笑いながら名衣がそう暴露する。

「えぇ~ほんと?ヤバいよナオ。そんなに寝相悪かったの~?」

私も名衣のノリにのって名緒を茶化す。

「む~!二人とも意地悪~」

名緒は頬を膨らませながらそう言った。