「ぐすっ、ふええええん」

公園のベンチの影、小さい頃私はよくそこで泣いていた。

三歳頃に練習が始まって、五歳には今と同じ練習内容でレッスンを受けてきた。

もちろん友達も少なからずいた私は、友達と遊びたかったり、弟妹の成長を見たかったりで、レッスンは本当に嫌いなものだった。

そのため、小さい頃の私は毎日レッスンを抜け出して一度家族できたことのある公園まで走って来ていた。

初めのうちはバレてしまうのが怖くてレッスン用のシューズや靴下、更には裸足で外に出ていた。

抜け出すことに慣れてきてしまった頃、私はある男の子に出会った。

その日はいつもより特に厳しいレッスンで、どうにか頑張ってみても吐き気がしてしまうほどのきつさだった。

私はどうしても我慢できなくて、その日もレッスンを抜け出して公園に来ていた。

公園のベンチの影。この日は泣くこともせず、腹部を押さえて胃の中のものがかき混ざるようにぐるぐるして今にも出てきそうな嘔吐物をこらえていた。

「うっ、うぐっ」

「あれ?君、どうしたの?」

もう少しで嘔吐しそうというところで、急に一人の小さな男の子が声をかけてきた。

「ぎ……ぎもぢ…わるい、」

嘔吐物が出てしまわないようにこらえながら、どうにか声を出す。

「ええ!だいじょうぶ?トっ、トイレ!」

男の子は慌ててそう言い、私に肩を貸して公園にあるトイレまで連れて行ってくれた。

公園の多目的トイレに入った私は、便座のところまで行って我慢していた嘔吐物を一気に吐き出した。

一緒に入ってくれた男の子はトイレの鍵を閉めてから私のもとに駆け寄って来てくれて、一生懸命背中をさすってくれた。

何から何まで吐き出した私は、男の子が差し出してくれたハンカチで口を拭いた。

さっきいたところまで戻って、影ではなく、ベンチに座る。

「君、いつもどうしたの?泣いてたの、ずっと見てたんだ。でも、話しかけられなくて……今日はいつもと違うかったから」

しばらく私が黙り込んでいると、男の子のほうが遠慮がちに話を切り出してきた。