「汗かいても絶対に流れないように、特別なメイク用品使ってるから♪この動画送りたいから連絡先教えてほしいんだけど」

そう言う雅さんに私はスマホを取り出して、LINEのコードを見せた。

雅さんはそれに自分のスマホをかざしてコードを読み取り、少しスマホを操作する。

その数秒後に、私のLINEが鳴った。

雅さんからのメッセージで、よろしくというスタンプとさっき見せてくれた動画が送られてきていた。

私からもよろしくお願いしますという、初期から入っているスタンプを送信する。
そのあと、動画を保存してスマホを閉じた。

「メイク道具はあとで渡すわ。次は服なんだけど……その前にお昼食べましょうか。デリバリーにするわ、何がいい?」

「えっ、悪いです」

雅さんがそんなことを普通に言ったので、遠慮する。

「いいのよ~、それに私の自腹が嫌ならお母さんにその分も請求しておくから、ね?」

雅さんは私を納得させようとそう言ってきたので、渋々コクリと頷いた。

「何がいい?」

「何でもいいですよ。好き嫌いないので何でも食べられます」

「そうなの?じゃあ私のお勧めにしてもいいかしら?」

「はい、全然大丈夫です」

私がそう言うと、雅さんが「分かったわ~」と言いながらスマホを操作し始める。

私はそのうちに立ち上がる。
変わり果てた自分をもう一度じっくり見てから、いつの間にか腕につけられていた来る時に髪を結っていたヘアゴムをパーカーのポケットにしまい込んだ。