「分かったわ~」

雅さんは軽くそう言って、ベルトタイプのシーザーケースにテーブルに置いていたハサミやコーム、ヘアゴムなんかを次々とセットしていく。

全てをシーザーケースに入れ終わったのかプシュプシュとスプレーのボトルの中の水を私の髪の毛にかける。

頭にひんやりとした感覚が感じられ、音が移動していくごとに冷たい感覚も移動していく。

そして、スプレーの音が聞こえなくなると、雅さんは「ハサミ入れますね~」と言いながらハサミを一つ手に取った。

鏡を見ると、雅さんが結んだ髪の毛のうちの一束を持って、ハサミをかけているところだった。

ザクッとハサミで髪を切る音が聞こえ、髪の毛の束の少し上で髪の毛が離れる。

私が少し寂しさを覚えている間にも、雅さんは次々と髪の毛の束を切っていった。

「あ、そうそう」

束を半分くらい切ったところで、雅さんがそう言いながらシーザーケースにハサミを直してお店の奥に消えてしまった。

ちょちょちょ、待って……!なんでどっか行くの⁉めっちゃすごいことになってるよ、私!

私は心の中でプチパニックを起こしながら、鏡で今の自分の姿を見ていた。

髪の分け目から右半分だけ短くなった髪型の自分を見て、思わず苦笑いをこぼす。

鏡が私とにらめっこをしていると、雅さんが私のもとに戻ってきた。

「はい、これからやりたい髪型見つけて」