「まぁ、はい」

私はイライラが募ってしまって、そうぶっきらぼうに答えてしまったけど、すぐにこれはダメだと思い直して言い直す。

「その、母はいつも急なことばかりで……困らされていますね」

笑顔を作って、雅さんの方を見ながらそう言う。

「そうなのね~本当に大変なのね~」

雅さんは苦笑いをしてそう言う。

そして、また口を開いた。

「髪の毛、切りたい?それともウィッグでいく?これくらいのストレートならショートヘアでも違和感はないと思うけど……」

急に真剣な顔をしてそう尋ねてくる雅さんに、私は何も考えずに答える。

「私は、女の子らしくと思って伸ばしていたので……どちらでもいいです」

ストレートに伝えると、雅さんは困ったように眉の端を下げた。

「そうなの……このサラサラなかわいいストレート、私は残しておきたいって思うけど~手間になるんだったら切った方がいいし……」

雅さんは顔をしかめながらも、ブツブツ呟いて真剣に考えてくれている。

ああっ、ヤバい!
雅さんの顔がどんどん困り顔になっていく……!

それを見た私は咄嗟に口を開いた。

「雅さん!あの、私の髪、結構長い方なので……ウィッグの時に入れるの面倒だから、バッサリ切っちゃってください」

そう言うと、雅さんは驚いた顔をしたが、すぐに「了解しました~」と言った。

「腰まであるし、ヘアドネーションしちゃおっか~」

雅さんはそう言うと、お店の奥に消えた。

少しすると戻って来て、たくさんの資料とペンを手に抱えてきた。

「じゃあ、切っちゃってもいいかしら?」

雅さんは資料を近くのテーブルに置いて、私の髪を細かく分けてゴムで縛りながらそう言った。

「はい、バッサリ切ってください」

私は意を決してそう言う。