Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜

なにが始まるのだろう?
客席からのそんな視線を感じながら、小夜は気持ちを整えて光と見つめ合う。
小さく光が頷き、頷き返した小夜は鍵盤に両手を置いた。

光が鳴らすスレイベルに合わせて、誰もが知る『ジングルベル』を、まずはオーソドックスに弾く。
次に光が、シャッフルビートを加えたスウィングで、ジャズ風の『ジングルベル』に変えた。
次は小夜が、厳かでクラシカルなロシア風に。
続いて光が、柔らかいワルツアレンジでフランスのシャンソン風に。

二人の手で『ジングルベル』が世界を巡る。
観客のボルテージが上がり、わくわくした様子で聴き入っているのがわかった。

小夜が、ゆったりと余白を活かした和風にすると、今度は光が躍動感溢れるブラジルのサンバ風に。
キレのあるアルゼンチンタンゴのあとは、エキゾチックな音階を使ったアラビア風に。

ラストはゴスペルクワイアのように、二人でノリ良くセッションすると、客席も手拍子で加わる。

やがてテンポを緩め、静かに静かに小夜が『ジングルベル』を奏で、最後の音に光がウインドチャイムを重ねた。

シャランと綺麗な音が空気に溶け込み、ほうっと客席からため息がもれる。
そして割れんばかりの拍手に包まれた。