その週の日曜日。
いつものようにバーでの演奏を終えた小夜は、馴染みの男性客に声をかけられた。
「小夜ちゃん、前に男性ピアニストが弾いてくれた曲が忘れられなくてね。曲名はわからないんだけど、どうしてもまた聴きたくて」
「どの曲ですか?」
「確か、セカンドステージだったと思うんだ。メモリーとかムーンリバーとかは知ってたんだけど、そのあとのバラード。初めて聴いたけど、すごくいい曲だった。静かで心に染み入るようで……」
ああ、と小夜は頷く。
「Sarah McLachlanの『ANGEL』ですね」
「エンジェル? へえ、確かにそんなイメージだった。小夜ちゃん、今度聴かせてくれない?」
「彼ほど上手く弾けませんが、私の演奏でよければ」
「ああ、お願い。楽しみにしてるよ」
「はい、かしこまりました」
男性は嬉しそうに笑って帰っていった。
(あの曲か……)
小夜はうつむいて想の演奏を思い出す。
心に染み入る、まさにそんな感じだった。
切なさに胸が打ち震え、張り裂けそうになり、どうしようもなく涙が溢れてきた。
(彼はどんな気持ちで弾いていたんだろう)
想いのこもった演奏。
あの曲に乗せて、彼はなにを伝えたかったのか。
(早速楽譜を探そう)
自分もあの曲に向き合いたい。
小夜はそう思った。
いつものようにバーでの演奏を終えた小夜は、馴染みの男性客に声をかけられた。
「小夜ちゃん、前に男性ピアニストが弾いてくれた曲が忘れられなくてね。曲名はわからないんだけど、どうしてもまた聴きたくて」
「どの曲ですか?」
「確か、セカンドステージだったと思うんだ。メモリーとかムーンリバーとかは知ってたんだけど、そのあとのバラード。初めて聴いたけど、すごくいい曲だった。静かで心に染み入るようで……」
ああ、と小夜は頷く。
「Sarah McLachlanの『ANGEL』ですね」
「エンジェル? へえ、確かにそんなイメージだった。小夜ちゃん、今度聴かせてくれない?」
「彼ほど上手く弾けませんが、私の演奏でよければ」
「ああ、お願い。楽しみにしてるよ」
「はい、かしこまりました」
男性は嬉しそうに笑って帰っていった。
(あの曲か……)
小夜はうつむいて想の演奏を思い出す。
心に染み入る、まさにそんな感じだった。
切なさに胸が打ち震え、張り裂けそうになり、どうしようもなく涙が溢れてきた。
(彼はどんな気持ちで弾いていたんだろう)
想いのこもった演奏。
あの曲に乗せて、彼はなにを伝えたかったのか。
(早速楽譜を探そう)
自分もあの曲に向き合いたい。
小夜はそう思った。



