Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜

二〇二八年十二月三十一日の大みそか。
ついにその日を迎えた。

想は歌番組の生出演を終えると、車で小夜のマンションに行く。
小夜を乗せるとそのまま二人で区役所へ向かった。
時間外窓口に、ようやく婚姻届を提出する。

「はい、確かにお預かりしました。不備がなければこのまま受理となります。おめでとうございます」
「ありがとうございます」

お礼を言って、二人で微笑み合う。
手を繋いで駐車場へと戻った。

「これで私も、来栖 小夜になったんだよね」
「ああ。はー、長かった。どれだけこの日を待ちわびたか」
「ごめんなさい。どうしてもファンの人の気持ちが気になって、先延ばしにしてって言い出したりして」
「わかってる。ありがとう、小夜。でも今夜からは絶対に片時も離してやらないからな。覚悟しろ」

冗談とも本気ともつかない脅し文句のような口調で言い、想はグッと小夜の肩を抱く。
はい、と小さく頷くと、想はいきなり小夜の頬にキスをした。

「ちょ、想! こんなところでなにするのよ?」
「いいだろ? 小夜はもう俺の奥さんなんだから」
「でもまだマスコミに発表してないでしょう?」
「ああ、そうか。今、本田さんに連絡する。婚姻届を提出したら、マスコミ各社に一斉にメールでお知らせすることになってるんだ」

想は片手でスマートフォンを操作して、本田に電話をかける。

「もしもし本田さん、お疲れ様です。……はい、無事に提出してきました」

すると小夜の耳にも『おめでとう!』という本田の声が聞こえてきた。

「ありがとうございます。本田さん、マスコミへの発表をよろしくお願いします。年内に間に合いそうですね。……はい、小夜はこのまま俺のマンションに連れて帰りますので。はい、わかりました。それでは」

通話を終えると、想はまたしても小夜の肩を抱き寄せる。

「マスコミがマンションに張り込むだろうから、ちゃんと小夜を守ってやれって。一歩も外に出さないからな、小夜」
「そ、それって、軟禁って言うんじゃ……」
「失礼な。正月休みの三日間、俺がたっぷり愛してやる」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべる想に、小夜はドギマギとうつむく。
これから始まる結婚生活、果たしてこんな調子で身がもつだろうかと真剣に考え込んだ。