冷たい零域の空気が、微かに揺れた。
次の瞬間、暗がりの中央に淡い光が収束し、女の姿が浮かび上がる。
「……やっぱり来たのね、美佳」
その声は懐かしくも不気味で、耳の奥に直接響くようだった。
「……ミオ?」
美佳は思わず一歩後ずさる。そこに立つ女は、確かにかつて通信画面越しに見た顔──第1章で出会った、あのホログラムの女だった。
だが、今回の映像は異様に鮮明だった。零域の暗闇と溶け合い、まるで触れられるほど実在感がある。
光の粒が彼女の髪を滑り、呼吸すら感じられるような錯覚を覚える。
「安心して。私はここに“実体”を持ってはいないわ」
ミオは微笑む。
「でも、この零域では、映像は記録を超えて干渉できる。……あなたの鼓動も、温度も、全部感じられるの」
美佳の背筋が粟立つ。
触れられていないのに、肩口に温かな感触がよぎった気がした。
「やめて……」
「やめられない。あなたが持つ“鍵”は、私をここに引き寄せる。私が待っていたものだから」
純が一歩前に出て、美佳とミオの間に立ちはだかる。
「彼女にこれ以上干渉するな。……お前の目的はわかってる」
「わかっているなら、なおさら止められないでしょう?」
ミオの姿が揺らぎ、光が一瞬だけ赤く変わった。零域の奥から低い振動音が響き、周囲の空間が歪む。
その瞬間、美佳は悟った。この対話は単なる言葉の応酬ではなく、記録と記憶をめぐる奪い合いの始まりだと。
「鍵は……誰にも渡さない」
美佳は強く言い切った。しかしその言葉に、ミオはただ意味深に笑うだけだった。
次の瞬間、暗がりの中央に淡い光が収束し、女の姿が浮かび上がる。
「……やっぱり来たのね、美佳」
その声は懐かしくも不気味で、耳の奥に直接響くようだった。
「……ミオ?」
美佳は思わず一歩後ずさる。そこに立つ女は、確かにかつて通信画面越しに見た顔──第1章で出会った、あのホログラムの女だった。
だが、今回の映像は異様に鮮明だった。零域の暗闇と溶け合い、まるで触れられるほど実在感がある。
光の粒が彼女の髪を滑り、呼吸すら感じられるような錯覚を覚える。
「安心して。私はここに“実体”を持ってはいないわ」
ミオは微笑む。
「でも、この零域では、映像は記録を超えて干渉できる。……あなたの鼓動も、温度も、全部感じられるの」
美佳の背筋が粟立つ。
触れられていないのに、肩口に温かな感触がよぎった気がした。
「やめて……」
「やめられない。あなたが持つ“鍵”は、私をここに引き寄せる。私が待っていたものだから」
純が一歩前に出て、美佳とミオの間に立ちはだかる。
「彼女にこれ以上干渉するな。……お前の目的はわかってる」
「わかっているなら、なおさら止められないでしょう?」
ミオの姿が揺らぎ、光が一瞬だけ赤く変わった。零域の奥から低い振動音が響き、周囲の空間が歪む。
その瞬間、美佳は悟った。この対話は単なる言葉の応酬ではなく、記録と記憶をめぐる奪い合いの始まりだと。
「鍵は……誰にも渡さない」
美佳は強く言い切った。しかしその言葉に、ミオはただ意味深に笑うだけだった。



