教室を抜けて、渡り廊下の端っこ。窓の外には夕焼けがにじんでいた。
誰もいない静けさが、心臓の音をはっきり聞こえさせる。
相変わらず無表情の霧島くんの顔をまじまじ見つめた。
前髪は目にかかるくらいの長さで、全体的にやや無造作な黒髪。太陽の光が当たると、少し青みがかって見えることもある。
切れ長の目元は涼しげで、まつ毛がやたらと長い。
あまり目立つタイプじゃないから気づかれにくいけど、綺麗な顔しているんだな……。
「……そんなに見つめられると、緊張する。」
「ご、ごめん!」
「いいところ、言うか」
「あ、あのね!言うから!言うけど、あんまり見ないでくれると助かるかも!!」
りんは顔を赤くしながら、勢いで言葉を飛ばした。
「えーと、まず……その、字がきれい!」
「……見たことあるの?」
「うん、理科の授業で隣になった時、さらさら〜って書いてて、すごいなーって思ってた!」
霧島くんは、ほんの少しだけ目を丸くした。
「で、二つ目は……あの……意外と優しい!」
「意外と?」
「あ、ご、ごめん!あのね!静かだけど、ミッションのとき手をさっと差し出してくれたの、助かったなって……!」
残るはあと一つ。けど、なぜか口が動かない。
最後のひとつ……なんか変にドキドキする……。
「で、で、でもって……えっと……その……」
りんは霧島くんの目を見て、言った。
「……笑った顔、ちょっとかっこいいと思いましたーッ!!」
叫ぶように言い切って、パッと顔をそらす。
なに言ってんのわたしーーー!!バグった!?
『ミッション②、クリア!』
スマホの音声が鳴った瞬間、その場にしゃがみ込んだ。
耳まで真っ赤。


