恋愛禁止ダンジョン、攻略中。




「……前に、わたし……ちゃんと好きって言ったんだよね」

「言った。俺は、忘れてない」





彼の声はあの日と同じ。
わたしの心臓が跳ねる。





「……奏都くん、わたし──今も、あなたが好き」





その言葉を口にした途端、スマホが小さく震えた。





「俺もだよ。前も今も、ずっと」





見つめ合う二人の間に、柔らかな空気が流れる。


──ピコン。

不意に、画面に通知が浮かんだ。


【最終ミッション達成】
【——“真実の恋”が見つかりました】


そこに映ったのは、ただそれだけの簡潔な文字。
次の瞬間、アプリのアイコンが淡い光を放ち、ゆっくりと消えていった。





「……消えた」

「これで、本当に終わり……なんだな」





奏都くんが、少しだけ寂しそうに笑う。
でもすぐに、その表情は穏やかにほどけた。





「でもさ。アプリがなくても、俺はきっとりんを好きになってたと思う」

「……っ、なにそれ……!」





胸が熱くて、涙がこぼれそうになるのを誤魔化すように、わたしは笑った。





「……ずるいよ、奏都くん」

「そう? じゃあこれからは、アプリなしでりんをドキドキさせるから」

「なっ……!? ほんとにずるい!!」





そう言って、二人は顔を見合わせて笑った。


もう“ミッション”じゃない。
これからは、わたしたちの意思で選んでいく。


そう思った瞬間、胸の奥にある“違和感”は、確かな恋のドキドキに変わっていた。