視界が一瞬にして暗くなって、次の瞬間には、鮮明な映像が雪崩れ込むように押し寄せてきた。
──お昼休みの廊下で、そっと差し出した手。
──お見舞いに行って、教室で見る姿と違う姿。
──放課後デートで何気なく話した内容。
そして。
『わたし、奏都くんのこと……本当に好きになっちゃったんだよ』
涙でにじんだ彼の顔が、記憶の奥から鮮やかに蘇る。
「……っ!」
思わずスマホを落としかける。
胸がぎゅうっと痛い。
でも同時に、温かい。
「星川さん……?」
霧島くんの声で我に返る。
顔を上げると、彼は真剣な目でわたしを見つめていた。
「……思い出したの?」
息が詰まる。
でも、うなずくことしかできなかった。
涙が止まらない。
だって、全部思い出したんだ。
彼と過ごした、全部。
消えたはずの、全部。
わたしは震える声で、言葉を絞り出した。
「霧島くん……じゃない、奏都くん……」
名前を呼んだ瞬間、彼の目が見開かれる。
そして、そっと笑った。
あのときと同じ、少し照れたような、優しい笑み。
「やっと、思い出したな」
涙があふれて、もう隠せなかった。
わたしはその場で彼に飛びつくように抱きしめた。
「……消えちゃったなんて、やっぱり嘘だったんだ……!」
「消えても、俺が覚えてた。だから戻ってきた」
強く抱き返される感触に、心の奥から込み上げる。
──『真実の恋を見つけろ』。
その答えは、もう出ていた。


