2人並んで校門を出る。
空は夕焼けに染まり、長い影が並んで伸びていた。
夕暮れに照らされた背中、隣に並ぶ足音。笑い合う声──そんな“記憶の気配”だけが、ぼんやり頭に浮かんでくる。
「……あれ? なんでだろ。わたし……前にも霧島くんと歩いたような気がする」
「……そうかもしれないな」
彼は笑って答える。けれどその横顔は、どこか切なげで、懐かしさを隠しきれていなかった。
小道を抜け、住宅街に差しかかったとき。
ふとした沈黙の中で、霧島くんがわたしの名前を呼んだ。
「……りん」
その瞬間。
心臓が大きく跳ねて、息が詰まりそうになる。
夕焼けの空、伸ばされた手、呼ばれる声。
遠い記憶の断片が、まるでパズルのピースみたいにかすかに浮かんでくる。
「っ……!」
頭の奥がざわつき、目の奥が熱くなる。
でも掴めない。手を伸ばしても、まだ届かない。
「……どうした?」
「な、なんでもない……」
声が震える。
けれど確かに、胸の奥に“何か”が芽生えているのを感じた。


