資料を漁っていると、分厚いファイルの間から一枚の写真がひらりと落ちた。
「……ん? これ」
拾い上げて見た瞬間、思わず息をのむ。
そこに写っていたのは、少し若い頃の柊先生。
まだ学生だった頃だろうか、制服姿で「恋愛研究委員会」と書かれた手作りポスターの前に立っている。
その隣に——。
見知らぬ女性。
同じ制服を着ていて、先生と肩を並べ、笑い合っていた。
距離が近い。ただの委員会仲間、というより……もっと特別な関係に見える。
「……これ……柊先生だよね?」
「間違いない」
霧島くんの声が、わずかに低くなる。
「この人は……?」
「……わからない。だけど、すごく仲良さそうだな」
わたしは写真から目を離せなかった。
どこか温かい雰囲気が伝わってくるのに、同時に胸の奥がざわついてしょうがない。
「もしかして……柊先生が、アプリを作った理由って……」
言いかけて、口をつぐんだ。
だって、憶測で決めつけるわけにはいかない。
けれど、その写真が示しているのは確かだった。
“柊先生と、この女性との間に、何かがあった”。
霧島くんも無言で写真を見つめ、そして静かに言った。
「……星川さん。ここから先は、もっと注意した方がいいかもしれない」
「え……?」
「柊先生が関わってる可能性は高い。しかも、ただの教師としてじゃなくて……この“研究委員会”の当事者として」
胸がどきんと鳴る。
アプリの真相に近づいた気がするのに、同時に何か怖いものに触れたような感覚があった。
わたしは写真をそっと机に置き、深呼吸をした。
「……でも、知りたい。ちゃんと最後まで」
霧島くんが少しだけ目を細め、笑ってうなずいた。
「……だよな。じゃあ、一緒に乗り越えよう」


