放課後。
窓の外はもうオレンジ色に染まりはじめていて、校舎の廊下に長い影を落としていた。
「今日は……図書室、もう閉まっちゃってるな」
霧島くんが腕時計をちらりと見て言う。
「じゃあ……この前見つけた空き教室で調べようか」
「うん」
二人で並んで歩くのが、まだちょっと気恥ずかしい。
でも、こうして自然に“二人で調べる”っていう流れになること自体、なんだか不思議で……少し、嬉しかった。
教室に入ると、机の上にコピーした資料や例のノートを広げる。
「……こうして見ると、やっぱり妙に凝ってるよね」
「“恋愛感情の数値化”とか、“強制失格”とか。普通の生徒が思いつくレベルじゃない」
霧島くんの真剣な横顔。
その横で、わたしは資料の束をめくりながら、ふと口に出していた。
「……でも、なんかデジャヴみたいな感じがする」
「デジャヴ?」
「うん。こうやって一緒に調べてるの、前にもあったんじゃないかって。根拠はないんだけど」
彼が一瞬だけ、動きを止める。
そして、小さく笑った。
胸が、きゅっと締めつけられる。
「新しく思い出を作っていくのもありなんじゃない?」
あまりにも穏やかな言い方に、言葉が出なかった。


