恋愛禁止ダンジョン、攻略中。




「──ねぇ、霧島くん」

「ん?」





ベンチに並んで座って、ひとしきり談笑したあと。
お弁当を片付けながら、私はカバンの中を探った。
昨日からずっと気になっていたノート。





「ちょっと、見てほしいものがあるんだけど」





膝の上に置いたノートを見て、霧島くんが目を見開いた。





「……それ」

「前に霧島くんと図書室にいたとき、机の上に置いてあったノート。たぶん誰かと使ってた調査ノート……らしいんだけど」





彼が表紙を開く。紙をめくる手が、ほんの一瞬止まった。
その仕草に、なぜか胸がざわめく。





「……この字、霧島くんの字じゃない?」

「え?」

「さらさら〜って綺麗に書く字が、霧島くんの字と似てるなって思ったんだけど、ちがう?」





思わずそう問いかけてしまった。
彼は驚いたように目を見開いたあと、ふっと視線をそらす。





「どういう……関係だったの? これ、一緒に使ってた相手って……」





問いかける声が少し震えていた。
私自身も、何を期待しているのかわからない。
ただ、聞かなきゃいけない気がした。


霧島くんはしばらく黙ってページを見つめ、やがて小さく笑った。





「……俺の字だよ、それ」





そこで彼は言葉を切り、真っ直ぐにこちらを見る。
からかうような笑顔じゃない。どこか切ない、でも優しい眼差し。





「俺と星川さんが使ってたノートだよ」





その一言で、胸の奥が強く揺れた。


……思い出せないのに。
なのに、涙が出そうなくらい、心が反応してしまう。