そしてその夜。
自分の部屋で、カバンから資料を取り出そうとしたとき──
机の引き出しの奥に、見覚えのないノートが挟まっているのを見つけた。
……これ、いつからあったんだろう?
……いや。これは、前に図書室で霧島くんと会ったとき、机の上に置いてあったノートだ。
中をめくると、走り書きした文字が多くあった。
わたしの字と……もう1人分、字があった。
見覚えのあるような、綺麗な字。
さらにページの間から、数枚のコピー用紙がはらりと落ちた。
それは、さっき図書室で手に入れた資料と同じものだった。
──でも、なんで?
コピーは今日初めて取ったはず。
じゃあ、このコピーは……誰が?
このノートは……わたし、誰と使ってたんだろう?
胸の奥に、ざわっとした感覚が広がった。
ベッドに寝転び、手元の資料をめくる。
「恋愛感情の育成をテーマとしたアプリによる“仮想ミッション”」
「生徒の“ときめき”を数値化し、記録・分析」
「強制失格処理・記憶削除処理あり」
……記憶、削除……?
その瞬間、心の奥で何かが軋んだ。
……知らないはずなのに。なんで、“怖い”って思ったんだろう?
頭の奥がずきんと痛む。
どこかで知っていたような、全く知らないような。
わたしはそっと、目を閉じた。
──何かが始まろうとしている。
そんな予感だけが、確かにそこにあった。


