放課後。委員会の終わり。
荷物をまとめて教室へ戻る途中、廊下の先に霧島くんの姿が見えた。
彼もこちらに気づいたのか、立ち止まり、軽く会釈をする。
「……霧島くん?」
自分でも驚くほど自然に、名前を呼んでいた。
彼は少しだけ目を見開いたあと、微笑んだ。
「うん。……お疲れさま」
「えっと、その……なんか、昨日もすれ違ったよね。よく会うなって思って」
「そっか。……偶然、だね」
そう答える彼の目が、一瞬だけ寂しげに揺れた気がして、思わず口を開いた。
「……わたし、変なこと言ってたらごめんね。なんか、霧島くんのこと……知ってる気がするんだけど、よく知らない気もしてて……」
そこまで言って、はっと口をつぐんだ。
何言ってるんだろ?わたし。
変な子って思われたかもしれない。
けれど霧島くんは、ただ静かに頷いた。
「……うん。そう思ってくれただけで、十分だよ」
「え?」
「また話そう、星川さん」
”星川さん“
なぜか、その呼び方は他人行儀で、嫌だと感じた。
なんで?名字で呼ぶのは、不思議なことじゃないのに。
……この人は、わたしがこういう気持ちになる理由、何か知ってるのかな?
そう思った瞬間、胸がぎゅっと締めつけられるように苦しくなった。
思い出せない何かが、確かにそこにある気がした。


