教室の窓際。
彼女は今日も、明るく誰かと笑っていた。
声がよく通るタイプじゃないのに、なぜかその笑い声だけは耳に届く。
……それが、今は少しだけ、遠く感じた。
朝のHRで眠そうに目をこすってたとき。
廊下で友達にハンカチを貸していたとき。
そんな些細な場面でも、前から、気づけば目で追っていた。
「ねぇ、それ昨日見た! マジで最高だったんだけど!」
「でしょ!? あの展開やばくない!? ちょっと泣いたんだけど!」
くだらない話題でも、どんな相手にも真正面で笑って応じる。
人を笑わせるのが上手いというより、自然と笑顔を引き出す子だった。
悪口を言わない。
空気を悪くしない。
でも、自分の意見を持ってる。
そんなところが、前から……漠然と“いいな”と思っていた。
だけど、何か行動を起こす前に、始まってしまった。
“恋愛禁止ゲーム”。
まさか、気になっていた子の名前が自分の画面に出てくるなんて──
ほんの数秒、息が止まった気がした。
奇跡みたいな出来事だった。
ミッションが来るたび、心がざわついた。
どんなときも冷静なフリをしていたけど、本当は毎回必死だった。
ときめき度が上がるのが怖くて、でも……少し嬉しくて。
それすらも、今の彼女はもう覚えていない。


