視界がふっと明るくなった。
ほんのりと夕陽が差し込む、静かな図書室。
パチン、と瞬きをしたりんは、しばらく何が起こったのかわからず、ぼんやりと立ち尽くしていた。
「あれ……?」
手にしていたはずのスマホは、床に投げ出されている。
視線を落としたその瞬間、ふいに向かいにいる人影に気づく。
「……霧島くん?」
そこにいたのは、クールな空気をまとった男子。
同じクラスの“霧島奏都”くん。いつも静かで、少し近寄りがたくて……でもなぜか印象には残ってる。
「……え、なんで霧島くんがここにいるの?」
りんが首をかしげながら問いかけると、奏都は一瞬だけ眉を動かした。
「……用があって、たまたま通りかかっただけ」
「へぇ……そうなんだ?」
りんはそう言って微笑むけれど、そこに“昨日までのふたりの空気”はなかった。
それはまるで、“他人に戻った”笑顔だった。
「……うん、まあ」
霧島くんの声もまた、どこか遠くて。
ただ見つめるその目には、言いようのない寂しさが宿っていた。
「……霧島くん、これ……わたしの?」
りんが机の上のメモを手に取る。
そこには、ふたりで書き込んでいた謎解きのノート。
「……ああ。預かってた」
「ありがと。なんか、よくわかんないけど、助かる。
……じゃあ、また明日ね、霧島くん」
何気なく告げたその言葉に、彼はわずかにうなずいた。
「……ああ。また明日」
霧島くんの表情はなぜか、
苦しそうで、悲しそうで、そして悔しそうで。
そしてなぜか、私もその表情を見て、チクリと心が痛んだ。


