涙がぽろぽろとこぼれる。
そんなりんを、彼の手が包み込んだ。
そして、すぐそばで――
「大丈夫。俺が……全部、覚えてるから」
りんの動きが止まる。
彼の声だけが、真っ直ぐに胸を貫いた。
「たとえりんが忘れても、
俺はりんを、もう一度好きにさせる。
何度でも、やり直す。
もう一回……ちゃんと、恋をさせる」
その言葉に、世界が震えた。
どこか遠くで、ノイズのような電子音が響く。
まるで、システムそのものが“躊躇”しているようにさえ感じた。
でも、記憶の波は容赦なく押し寄せてくる。
「奏都くん……」
名前を呼んだ瞬間、りんの視界がふっと、白く染まった。
記憶の境界線。
恋のラストシーン。
そのギリギリで、彼の声が心に深く刻まれた。
「もう一度、ちゃんと出会うから。
その時も……りんにまた、恋をするよ」
——ぷつん、と音がして、すべてが闇に溶けた。
でも、どこかで心だけが、
わずかにその言葉のぬくもりを覚えていた。
———
《ゲームオーバー処理完了》
《処理:恋愛感情ブロック適用 / 記憶セクターB-2削除済み》
《ペアリング解除済み》
———
……静かになった。
部屋も、心も、なにもかも。
ピコン、ともう一度通知が鳴る。
りんは、スマホの画面をただ見つめていた。


