でも──
そんなふざけたやりとりの裏で、りんの手の中には、あの新聞記事のページのコピーがあった。
そして、それを握る指がほんの少し震えていることに、彼女自身も気づいていた。
緊張、恐怖、でも──そのなかに微かにまざる、
“ふたりで謎を追いかけている”という、どこか高揚感に似た感情。
もしかして、こういうのも……“恋の一部”なのかもしれない。
「──帰ろう。今日は、これ以上ここにいるのは危険だ」
奏都くんが立ち上がり、静かにドアを開く。
りんも、資料を大切にノートに挟み込んで後を追った。
部屋を出ると、もう日は落ちかけていて、廊下はすっかり夕闇に包まれていた。
そのとき──
「……っ!」
「どうした?」
「今……誰か、見てなかった?」
曲がり角の先、誰かがいたような気配。けれど、覗いてみても誰もいない。
「気のせい、かな……?」
「いや……」
奏都くんはそっとりんの肩を引き寄せ、小声で囁く。
「“見られてる”って思ったときは、大体……見られてる」
その言葉に、りんの心臓がドクンと跳ねた。
近い──声も、距離も、なにもかもが。
「わ、わかったから、ちょっと離れて!? ときめき度また上がるからっ!」
「……自業自得だろ?」
「もーーー!! ほんと優しくしないでって言ってるのに!!」
叫びながらスマホを確認する。
《現在のときめき度:73%》
「終わった……」
がっくりと項垂れるりんの横で、奏都くんはくすっと微笑んだ。
だがその裏で──廊下のさらに奥、旧視聴覚室の扉の隙間から、誰かがじっとこちらを見つめていた。
月明かりに照らされた瞳が、冷たく光る。
まるで——
「彼らが何を知ったのか」、見極めているかのように。
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