翌朝。





「……って、なにこの寝ぐせ!? キャンプファイヤーでもあった!?ていうか私、炎属性になったの!?」





鏡に映った自分の髪型に、りんは開口一番、全力でツッコんだ。
右サイドがまるでドラゴンの翼のようにバサァと跳ねている。


寝ぐせ直しスプレーで格闘しながら、頭の中は昨夜のことでいっぱいだった。


誰かが、意図的に“恋心を消してる”かもしれない……。


思い出すのは、学校のネットワーク内で見つけた奇妙なログ。
アプリ内の“恋愛ゲーム”と称しながら、どうやら何かを上書き、あるいは“削除”している可能性がある。
そして――昨日ゲームオーバーになったペアの、あの不自然な距離感。


もしかして本当に、記憶が……?


ただのラブコメじゃ済まされない展開に、心がざわつく。


でも、それと同じくらい胸の中で膨らんでいたのは――
奏都くんの存在だった。


一緒にミッションをこなして、クールなのに時々優しくて、ふいに見せる笑顔がずるくて。
一緒にアプリの謎まで探って、ちょっとした“相棒”みたいな空気が心地よくて。
だけど、それが“ドキドキ”に変わってしまえばゲームオーバー。


“恋しちゃいけない”って言われても、そんなのコントロールできたら苦労しないよ……。
奏都くんの隣って、ずるいくらい心地よくて、でもドキドキして。
この気持ち、どうすればいいの……?


りんは制服のリボンを結び直しながら、ふとそんな疑問を胸に抱いた。





「……って考えてる時点で危険じゃない? 私、ときめき度また上がってない!?」





叫びながらスマホを手に取り、ときめき度を確認。

《現在のときめき度:62%》





「……うわ、前より上がってるーーーッ!!」





そうこうしている間に、登校の時間が迫る。


恋も、謎も、止まらない。
それでも今日という一日が、何かのヒントになるかもしれない。


りんは、急いでバッグを肩にかけて玄関を飛び出した。