校内にはちらほら部活生の声。夕陽が廊下をオレンジに染める中、りんと奏都くんはこっそり図書室のドアを開けた。
「こ、ここに来るの久しぶり……」
「静かに。目立つと怪しまれる」
霧島くんの低い声に、りんはピシッと背筋を伸ばす。
今の目的は――“このアプリは誰が作ったのか”、“どうやってときめき度を測ってるのか”、そして――“記憶が消えるって、本当なのか”。
ふたりはなるべく人のいない奥のパソコンコーナーへと移動した。
図書室の時計の針の音だけが、妙に大きく聞こえる。
生徒たちの笑い声は、ここまで届かない。
——まるで“何か”を調べてはいけない場所のように、静かだった。
「ねぇ、そもそもこの“恋愛禁止アプリ”、配信元不明なんだよね? 学校公認でもないし……何か、データ残ってたりしないかな」
「これ……外部の人間が作ったとは思えない。逆に“内側”からじゃないと無理だ」
「つまり……校内の誰かってこと?」
「もしくは、昔この学校に関係してた人間……」
ぞくり、とまた背筋が冷える。まるで、誰かにずっと見られていたような——そんな感覚。
りんは無意識に腕を抱え、震えを押さえるようにする。
「試しに、図書室のパソコンで校内サーバーにアクセスできるか見てみる。何かヒントになるファイルがあるかも」
奏都くんは迷いなくノートPCを操作し始めた。
その手つきの慣れ具合に、りんはちょっとだけ見惚れてしまう。
「うわ、なんでそんな指きれいなの……ダメ、見ない……っていうか、ときめくな私!!!」
心の中で赤ペンで「減点!」って書く勢いで、無理やり気持ちを制御する。
でも今は、ミッションじゃなくて、探偵気分。ときめきは一旦棚上げだ。
「……あった。校内掲示板の更新データ。普通は見られないシステム管理側のログ」
「えっ、そんなの見ていいの!?」
「バレなきゃ大丈夫」
サラリと危ないセリフを吐く霧島くん、つよい。


