恋愛禁止ダンジョン、攻略中。




午後の授業が終わったあと、りんは奏都くんの袖をつまんで、半ば引っ張るようにして屋上へ。





「……で、どうしたの?」

「見た? 藤咲さんと早乙女くん」

「ゲームオーバーのやつか」

「そう。バッジと日誌のペナルティがなくなったみたいだけど、なんか……」





りんはフェンスにもたれて、うつむく代わりに空を仰いだ。





「今日、すれ違ったんだよ。藤咲さんと早乙女くん」

「それが?」

「ぜんっぜん目を合わせなかった。声もかけずに、すーって通りすぎたの。……おかしくない?」

「それ、たまたまじゃなくて?」

「違うってば!だってあのふたり、ついこの前までめっちゃ仲良かったのに!あんな他人行儀になるなんて――」





そこまで言って、りんは唇を噛む。





「画面の下に、『記憶リセット』って書いてあった。もしかして……もしかしてだけど、”好き“っていう気持ちがリセットされたんじゃないかって」





その言葉に、奏都くんの目が一瞬だけ細くなる。


フェンス越しに吹き抜ける風が、2人の会話をさらっていく。
遠くに聞こえる運動部の掛け声さえ、うそのように小さかった。





「そんな、アプリにそこまでの権限……可能なのか?」





低く呟いた後、奏都くんはポケットの中で拳を握る。





「わかんない。でも、“ときめき度”とか“感情数値”とか、普通に考えておかしいじゃん。アプリのくせに、人の心に土足で入ってくるっていうか……」





自分でそう言いつつ、どうしようもない不安に襲われた。


記憶が……なくなるって、本当に……?
さっきまで隣にいたはずの人が、“他人”になるってこと……?


りんは、奏都くんをそっと見つめた。


……もし、奏都くんとの記憶が全部、消えたら。
手をつないだことも、名前を呼ばれたことも。
——そんなの、耐えられない。


——これ、“恋をしてはいけない恋愛ゲーム”って……意味、わからない。