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翌朝の校舎は、空気がどこかピリついていた。
廊下を歩く生徒たちが、ひそひそと何かを話している。
「見た? 今朝の通知……」
「……え、本当?」
りんは校門をくぐってすぐ、アプリ通知に気づいた。
《NEWS:ゲームオーバー発生♡》
《2年B組・藤咲ももか/1年C組・早乙女しんじ》
《理由:ときめき度オーバーによる“両想い”判定》
「えっ……!」
画面の下には、ラブリーなフォントが、皮肉のように浮かんでいた。
《※両想い判定につき、感情制御のため一部記憶リセット処理実施済》
両想い判定されたら——“相手のことを好き”になってしまったら、ゲームオーバー。
そしてもっと気になる文字が。
「記憶……リセット……?」
クラスメイトたちがざわめく中、りんはもやもやした気持ちを抱えていた。
……確か、この前まで放課後も一緒にいたよね?廊下でも、いつも楽しそうに話してたのに……。
今日のふたりは、別々の席で、どこか他人行儀だった。
藤咲さんはグループの会話に加わらず、早乙女くんもずっとスマホを見ていた。
……なんか、違和感ある。
昼休みも、りんは自販機の横で偶然ふたりがすれ違うのを見た。
目も合わさず、すれ違っていく。
——まるで、最初から知らない人みたいに。
ぐらり、と胸の中に不安が生まれる。
……このゲーム、ただのアプリじゃない……?
胸元のバッジを見つめるりんの顔に、初めて“疑い”の色が浮かぶ。


