この日は、放課後までミッション通知が来なかった。
周囲の喧騒はすっかり消え、夕日がカーテン越しに差し込んでいる。
机に突っ伏しながら、りんは苦悶の声をあげていた。
「……無理……書けない……“恋心を抑えるための努力”って、そんなの……ある?」
ペナルティ初日。
胸元には、ちゃっかり光る“恋愛禁止バッジ”。
まるで恥ずかしい失恋ステッカーみたいに主張が激しい。
あぁぁああ……!わたしだけペナルティって、どんだけときめき不安定なの!?
目の前には“禁恋日誌”が開かれている。
【本日の反省】
・奏都くんと目が合っただけで息止まりました
・声が聞こえただけで反射的に背筋伸びました
・名前呼ばれた瞬間に爆発した気がしました(主に内面)
これ提出して何になるの……!?しかもこれ奏都くん読んだら死ぬ!わたしが!!
りんが頭を抱えてのたうっていた、そのとき──
「……なにやってんだ?」
「ぎゃああああああああああ!!!?」
ドアの音なんて聞こえなかった。気づいたときには、奏都くんがそこにいた。
うそでしょ!?これ現実!?ラブコメの主人公をいじめる脚本なの!?
奏都くんはチラリと胸元のバッジと、スマホの禁恋日誌の画面を見た。
「真面目にやってるんだな、ペナルティ」
「み、見た?」
「……爆発した、みたいなのは見えた」
「一番恥ずかしいところ見てるじゃん! わたし一人でドキドキしすぎ……うう……」
ドキドキしすぎて爆発してるの、わたしだけじゃん……なんなのこれ、恋って罰ゲームなの……?
バッジがまたピコンと光って通知が出る。
《“鼓動注意”!落ち着いて呼吸しましょう♡》
「も〜うるさい! こっちはめちゃくちゃ落ち着こうとしてるのに!」


