教室に入ると、視線が刺さる。
やたらニコニコしてる子もいれば、ヒソヒソしてる子も。
奏都くんは、まだ来ていなかった。
顔……合わせづら……。
わたしはそっと、自分の机に座り、アプリを開いた。
『本日から、あなたの恋心を“観察”します♡』
……これ、もはやホラーでは?
教室のドアが静かに開いた。
「……奏都くん……!」
まわりが一瞬ざわつく。
りんは一気に心臓が跳ねた気がして、急いで顔をそらした。
なんで!?なんでこっち見るの!?やめて!?
……いや、別に見られてるわけじゃない。
でも気のせいじゃなくて、彼の視線が自分を一瞬、かすめた気がした。
ていうか、気にしすぎ……っ!こっちはペナルティ者なんだから、平常心平常心……。
なのに。
奏都くんは、一歩だけ歩みを緩めて──
ためらうように、わたしの机の横で立ち止まった。
見ちゃだめだ、と思って、わたしはノートの端に視線を落とす。
……でも、声は聞こえてしまった。
「……大丈夫だった?」
その声は、まるで何も変わっていないように静かで、淡々としていた。
けど、ほんの一瞬、目がどこか申し訳なさそうに揺れた気がした。


