朝。目覚ましよりも先に、どんよりした気分で目が覚めた。





「……はぁあ〜……」





カーテンを開けると、今日に限ってやたらと空が晴れている。


こんなにスッキリした空の下で、“失格者”が登校していいのか……?


制服の胸元に、ピンク色でド派手な「恋愛禁止バッジ」をつける。
しかも、文字が無駄にポップ体。


\恋愛感情、要注意!/


ふざけてんの……?


今日から「禁恋日誌」も入力しなければならない。


りんは再び、大きなため息をついた。





通学路。
道ゆく同級生が、すれ違いざまにヒソヒソ。





「え、あれって星川さんじゃない?」

「ああ! 昨日失格した子?」

「バッジかわいいけど、ダサすぎてヤバ……」





……わたしだって!好きで失格したわけじゃないし!


心の中で全力反論しながら、なんとか校門をくぐる。

すると──





「りんっ!!」




後ろから、全力疾走してきたのは明日香だった。





「え、ちょっ、びっくりした……!」

「ごめん、どうしても確認したくて!!」





息を切らせながら、明日香の目線はわたしの胸元へ直行。





「本当に……恋愛禁止バッジ、つけてるぅぅぅー!!!」

「う、うるさいっ!!声でかいっ!!」

「昨日のアプリ内掲示板見て、びっくりしたよ!」

「……っ、ち、ちがっ、ちがうよ!!これはあくまでアプリの不具合というか、事故というか!!!」

「はいはいはい、恋の事故ね〜〜〜〜〜〜〜♡」

「ぎゃーーー言わないでーー!!」





明日香は笑い転げてるけど、わたしはマジで瀕死。
だって──


……あのとき、「りん」って呼ばれた瞬間。
心臓が、ほんとに、ひと跳ねしたんだもん。

冗談とか、ノリとか、バグとか。
いくら言い訳しても──あの感覚だけは、消せなかった。