恋愛禁止ダンジョン、攻略中。




「……ふっ」

「えっ、なに!?」

「やっぱ、星川さん、うるさいなって」

「ちょっと、ひどくない!?……って、あっ……」





思わず言い返しかけて、ハッとする。
そうだ、霧島くん、体調悪いんだった……。
わたしがうるさくしていると、声が頭に響いて、きっと辛い。





「いや、うるさいくらいがいい。……なんかさ、家に1人でいると気が滅入りそうで。」

「ご両親は?」

「仕事。いつも忙しそうなんだよ、2人とも」

「そうなんだ……」





体調の悪いときに家に1人でいるって、どれだけ心細いだろう。
家の中が、よりシーンとして聞こえる。


霧島くんって、落ち着いてて大人びているから、1人でも大丈夫と思われがちなのかも。


でも……。





「だから、星川さんが来てくれて、助かった」





それは、たぶん、いつもよりほんの少しだけ素直な声だった。


でも、素直すぎて、
いつもの彼からは想像もできないくらいに、優しくて——
りんは、うまく言葉を返せなかった。


言ってくれた素直なその言葉を、大事に心にしまった。
もし、彼がほんの少しでも寂しかったのなら——その隙間に、そっと寄り添えたらいいな、と思った。


ふと、静けさが落ち着きかけた頃。

——ピロン。

まただ。アプリの、現実に引き戻すような無機質な通知音。


《ミッション④:クリア!》
《ときめき度+5%》





「待って!?わたし、着実に増えてない!?」

「何の話?」

「い、いいから!寝てて!とりあえず寝てて!!わたしもう、心の冷却が追いつかないから!!」





りんは全力で手で自分の顔をあおぎながら、
布団の中で微笑む霧島くんに背を向けた。