霧島くんがベッドに座ったまま袋を受け取ろうとしたその瞬間──
ぴ、と手がふれた。
ふわっとした熱。
霧島くんの指先が、りんの指にかすかにふれた。
「わっ、ご、ごめんっ!」
りんは思わず手を引っこめた。
「……別に」
霧島くんは何事もなかったように、袋の中をのぞき込んでるけど、りんの心臓は、思いっきり体育祭レベルの騒ぎになっていた。
ちょっと手が触れただけなのに、なんでこんなに……。
初日は、3分間も手を繋いだのに。あのときよりずっと短くて、ずっとさりげなかったのに。
なのに、心臓の音は、あのときよりもずっと、大きかった。
「……これ、ありがとな」
「えっ」
「お見舞い。ミッションのためだったとしても、来てくれて、ちょっと……嬉しかったかも」
「ミッションのためだけじゃ……!」
そこまで言って、言葉に詰まった。
どうしてか、これ以上の言葉が、喉につかえて出てこなかった。
ミッションのためだけじゃなかったら、じゃあ、何のため?
……そんなのわかりきってる。
ただ純粋に、霧島くんの体調が心配だっただけ。……ただ、それだけ。


