そして、放課後。
りんはコンビニ袋をぶら下げ、霧島くん家の前に立っていた。
……どうしよう。ノックして倒れてたら?
逆に、イケメンすぎてときめき死とか!?
自分でも何を言ってるのかわからない。とにかく、落ち着け、わたし。
意を決してチャイムを押すと、
ちょっとしてから、明らかにだるそうな声が返ってきた。
「……はい」
「えっと!星川です!ミッションが、じゃなくて、お見舞いに来ました!!」
沈黙。
留守? いや、声はした。無視された!? わたし、なんかやらかした!?
焦り始めたころ、ようやく——
ガチャ、とドアが開いた。
そこには、パーカーのフードをかぶって、寝ぐせまみれの霧島くん。
少し赤くなった頬に、とろんとした切れ長の目。
「あ……本当に来たんだ……」
「体調大丈夫!?ていうか、顔色!ああもう無理しなくていいから、布団戻って!!」
強引に上がり込むりん。
家には誰もいないみたい。
部屋の中は意外と片付いていて、なんだか落ち着く雰囲気。
布団に戻った霧島くんに、そっと袋を差し出す。
「えっと……これ。お見舞いってことで。あと、ミッションも……兼ねて、ってことで」
袋の中には、スポドリ、のど飴、そして──
「……これ、バニラアイス?」
「うん。なんか、好きそうっていうか。顔的に」
「顔的に……?」
「いや!ちがっ、なんか!シュッとしてるから!バニラのイメージで!」
「どういうこと」
霧島くんは、少しだけ笑った。
「……ありがとう」
その一言が、心の奥にふわっと落ちてきた。
心臓が、ひときわ強く跳ねた。


