「……星川さん」
名前を呼ばれて、肩がぴくっと跳ねた。
振り返ると、昇降口のすぐ近くに霧島くん。
相変わらず、表情の読めないクールフェイス。
「このあと、駅まで行くなら、方向……一緒だよな」
「……え、えっ!?」
え、なに? いま、なに!?
「いや、別に深い意味はないけど。なんか、偶然タイミング合ったから」
「う、うん! そ、そうだよね!……べ、べつに一緒に歩いても変じゃないし!」
なぜかテンパりながらも、りんは頷いた。
2人並んで歩く、夕方の帰り道。
制服の袖がちょっと揺れて、足音がふたつ、交互に響く。
ぽつ、ぽつ、と話す言葉も、
どこか間延びして、空気が静かに流れる。
なんか、変な感じ……。
沈黙が続いてるわけでもない。
会話が盛り上がってるわけでもない。
でも、隣に霧島くんがいるだけで、
なぜか心臓の音が、普段より少しだけ大きく聞こえる。
チラリと、横目で彼を見た。
制服のシャツの袖からのぞく手首。
まっすぐ前を見ている、夕日に照らされてくっきりとした横顔のライン。
風にゆれる、少し長めの前髪。
顔、ちっちゃ。……って、何見てんのわたし!!
そっと目をそらして、前を向く。
ただ歩いてるだけなのに。さっきまで普通だったのに。どうしてこんなに、心がざわざわするの……?


