「好きになったら、アウト——って、どういうこと!?」
なんて、そんな非現実なルールがあるわけない。
……と思ってた。さっきまでは。
*
「昨日のドラマ、見た人ーっ!?」
昼休みの教室。女子たちのキャーキャーした声が飛び交う中、星川りんはパンをくわえたまま、自分の席でぺたんと座っていた。
「もうさ、マジでキュンキュン止まらなかった!」
「あの告白シーン、反則級〜!」
恋愛…かぁ。みんなよくそんなに盛り上がれるなぁ。
笑顔でうなずきながら、りんは内心こっそり首をかしげていた。
恋の話は苦手じゃないけど、どこか“よくわからない”世界だった。
「りんはどう思った?やっぱ胸キュンだったでしょ?」
「えっ、あ、うーん……わたしは、なんか照れちゃってちゃんと見れなかったかも。甘酸っぱすぎてさ〜」
ごまかすように笑うと、友達が「それ、わかる〜!」と盛り上がってくれた。
けど正直、りんの中では“わかる”というより、“未知”に近い感覚だった。
中学に上がって、急に周りは“恋”の話ばっかりになった。
でも、りんにはまだ現実感がなかった。
好きって、どこから? キュンって、どんな感覚?
考えてもわからなくて、りんはパンの袋を開けた。
その瞬間だった。
——ピロンッ。
スマホが振動し、ありえない通知が表示されていた。



