「好きになったら、アウト——って、どういうこと!?」

なんて、そんな非現実なルールがあるわけない。
……と思ってた。さっきまでは。







「昨日のドラマ、見た人ーっ!?」





昼休みの教室。女子たちのキャーキャーした声が飛び交う中、星川りんはパンをくわえたまま、自分の席でぺたんと座っていた。





「もうさ、マジでキュンキュン止まらなかった!」

「あの告白シーン、反則級〜!」





恋愛…かぁ。みんなよくそんなに盛り上がれるなぁ。


笑顔でうなずきながら、りんは内心こっそり首をかしげていた。
恋の話は苦手じゃないけど、どこか“よくわからない”世界だった。





「りんはどう思った?やっぱ胸キュンだったでしょ?」

「えっ、あ、うーん……わたしは、なんか照れちゃってちゃんと見れなかったかも。甘酸っぱすぎてさ〜」






ごまかすように笑うと、友達が「それ、わかる〜!」と盛り上がってくれた。
けど正直、りんの中では“わかる”というより、“未知”に近い感覚だった。


中学に上がって、急に周りは“恋”の話ばっかりになった。
でも、りんにはまだ現実感がなかった。


好きって、どこから? キュンって、どんな感覚?


考えてもわからなくて、りんはパンの袋を開けた。



その瞬間だった。



——ピロンッ。
スマホが振動し、ありえない通知が表示されていた。