それからと言うもの、足音は段々大きくなっていった。睡眠不足は加速するばかり。こうなったのもあの花束が飾られている電信柱に手を合わせてからだ。もしかしたらそこにもう一度行けば何かわかるかもしれない。
 そう思い立ち、私はその場所へ車で向かう。
 場所はこのマンションから遠くはない。十五分くらいで着く。信号を何個も越えていき、カーブの近くにある電信柱付近に車を停める。そこにはあったはずの花束がなくなっていた。

「誰かが回収したのかな?」

 疑問に思っていると、また声をかけられる。今度は男の人と女の人だ。両方ともカラフルな色の花束を持っていて、その場に添えた。

「あの、どちら様ですか?」

 そう話しかけると、男の人の方が話しだす。

「亡くなった娘の父親です。本当は亡くなった日に来たかったのですが、二日も経っていました」
「二日前ですか?」

 私がここに来たのは一週間前だ。それなのに花束が添えてあったのはなぜだろうか。それについて尋ねてみる。

「一週間前に誰かが花束を置かれていたみたいですが……」
「もしかしたら友達かもしれませんね」

 どうやらここのカーブでトラックと衝突し、彼氏と二人で亡くなったという。その友達なら詳しいことを知っているのかもしれない。

「その友達の電話番号を知っていますか?」

 そう尋ねると、母親の方が話を綴る。

「申し訳ありません。電話番号は知らないです」
「そうですか……」
「その……他に誰かが来ませんでしたか?」
「そういえば黒いワンピースを来た女の人が来ていましたね。黒髪のロングヘアで、口の左下にホクロがついていました」

 別にまじまじみていたわけではないが、何だか特徴的な顔つきだったので覚えていた。それを聞いた二人は一瞬目を見開いたが、涙を流すばかりで何も教えてはくれなかった。