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最高すぎた推しとのデートの翌日の放課後。
私は今日も風紀委員室で机を挟んで目の前に座る千晴のことを睨んでいた。
今日こそはきちんと反省文を書かせる為に。
先日は仕事のついでに千晴の反省文の監督をしたせいで、酷い目にあった。
だから今日は仕事もせずに、千晴から片時も目を離さないつもりだ。
少しでもおかしなことを書き始めたら止めてやる。
「ねぇ、先輩」
「ん?」
先日とは違い、一応真面目に反省文を書いていた千晴を睨みつけていると、ふと千晴が思い出したかのように手を止め、顔を上げた。
急にどうした?
「先輩は土日何やってたの?」
「え?土日?」
「そう土日」
千晴からの突然の質問に首を傾げる。
私を見る千晴には、何か意図があるようには見えず、本当に今思ったことをそのまま口にした、という感じだ。
「推し…じゃなくて、沢村くんとデート」
なので、私も特に何も思わずただ淡々と千晴からの質問に答えた。
「…」
私の答えを聞いた後も、千晴は何も言わずにただじっとこちらを見続ける。
そんな千晴の様子に、まだ続きが聞きたいのかな、と思い、私は続けて喋ることにした。
「運命diaryっていう漫画が原作の映画を観に行ったんだけど、その前にその漫画に出てきた神社に行ってきたの。近場にまさかあんな神スポットがあるなんて知らなかったよ」
そこまで言って、制服からスマホを取り出し、ライブラリを開く。そしてその中にある風景の写真や沢村くんの写真を千晴に見せた。
ここまで喋り出すともう止まらない。
「沢村くんかっこいいでしょ?デートのプランも沢村くんが考えてくれて、めっちゃ楽しかったよ。沢村くん、すごいスマートで、子どもには優しいし、盗撮犯には毅然と立ち向かうし。困っている人には平等に手を差し伸べられる素敵な人だったの」
昨日のことを思い出し、思わず締まりのない表情になる。推しが尊すぎて語っても語っても語り足りない。
あんな素晴らしい人の彼女になれた私は世界一の幸せ者だ。



