推しに告白(嘘)されまして。




side柚子



一睡もできなかった。

私は布団の中でただただ天井を見上げていた。
それもバッキバキの目で。

ここは施設内の宿泊部屋。
この部屋の畳の上に私たち生徒は布団を敷き、十人ほどで一緒に寝ていた。

その十人の誰のスマホからもまだアラームは鳴っていない。
障子の向こうの空は、おそらく明るくなり出した頃で、あと1時間もすれば起床時間になるだろう。

今日の予定のことも考え、少しでも寝なければならないということは十分にわかっている。
そうしなければ体力が持たない。

だからこそ、私は就寝時間から何度も何度も寝ようとまぶたを閉じた。

しかしまぶたを閉じるたびに、星空の下で涙を流しながら、こちらに微笑む悠里くんの姿が浮かんでしまうのだ。
それもあまりにも鮮明に。

昨日のあの場面が頭の中で繰り返され、結局私は今まで一睡もできずにいた。

私は昨日、何よりも大切な存在、推しと別れた。

私は推しである悠里くんに、恋心ではなく、憧れを抱いていた。悠里くんと同じではなかった。
それでも悠里くんと共にいられた時間は幸せで、楽しくて、キラキラと光で溢れた、かけがえのない、手放し難いものだった。

悠里くんと別れることを望んだのは、私だ。
悠里くんと同じ想いを抱けない私と付き合っていても、悠里くんは傷つき続けるだけだから。
実際、傷つき、苦しそうに、辛そうにしている悠里くんを、私は何度も見てきたし、その姿に胸が痛んだ。

私も耐えられなかったのだ。
このまま何事もないように悠里くんの隣に居続けることに。