けれど、このまま一緒であることを選び続ければ、俺だけじゃなくて、柚子も傷つくことになる。
俺だけが傷ついて、それでも幸せを感じられるのはいいが、柚子が傷つくことは嫌だ。
柚子には傷なんかとは無縁に、ずっと笑っていて欲しい。
きっとこの望みを叶えられるのは俺じゃない。
一度視線を伏せ、ゆっくりと深呼吸する。
自然の中の優しい空気は俺を不思議と落ち着かせた。
これ以上、柚子に辛い役回りをさせるわけにはいかない。
「あのね、悠里くん…」
「待って、柚子」
今、まさに別れを切り出そうとした柚子の言葉を、俺は優しく止める。
「俺から言わせて」
それから伺うように柚子の瞳を覗いた。
柚子は俺の言葉に一瞬傷ついたような表情を浮かべて、静かに頷いた。
柚子もちゃんと俺が何を言いたいのかわかっているのだ。
「言いにくいことを何度も言わせてごめん」
声がかすかに震える。
「別れよう、柚子」
それでも俺はそう柚子に告げた。
やっと俺から吐き出された言葉。
苦しくて、苦しくて、言わなければよかった、と思えてしまうほど、辛い。
だが、こんな思い、もう柚子にさけるわけにはいかない。
俺の言葉に柚子はまた涙を流していた。
その姿に自然と俺の目からも涙が溢れた。



