暗くなってしまった私の表情にいち早く気づき、「どうしたの?柚子?」と悠里くんが心配そうに私の顔を覗く。
言えない。言いたくない。
推しを傷つける言葉なんてもう吐きたくない。
本当は心から悠里くんに笑っていて欲しいの。
「…何でもないよ」
この胸の内を絶対に悟られないように、無理矢理にでも笑顔を作る。するとそんな私に悠里くんは「…そう」とどこか意味深に呟いた。
そして優しく私の額に唇を寄せた。
「俺はいつでも柚子の味方だよ」
まるで王子様のように柔らかく悠里くんが笑う。
その瞳には私を気遣うものがあり、胸が痛んだ。
それでも悠里くんによって高鳴る胸の鼓動は止まらない。
近すぎる距離に、額に残る熱。
息をすることさえも、難しい、熱く甘い空間。
そこに囚われた私は、甘さと罪悪感に苛まれ、その息苦しさに溺れた。
申し訳ないと思うのに、ときめかずにはいられない。
私はどうしたら息ができるの?
甘い甘いツタが私の首に絡まって、ゆっくり、ゆっくり、締めていく。
逃げなければ、生きられない。
けれど、私はそのツタからの逃げ方がわからなかった。



