「熱っ…」
突然、右隣から少しだけ苦しそうで痛そうな声が聞こえてきた。
その声につい反射で、今度は右隣を向く。
「どうしたの?」
「ん、思ったより熱くて…」
心配しつつも、千晴の様子を伺えば、千晴はほんの少しだけ辛そうな表情で、舌を出した。
その舌は確かに熱で赤くなっている気もする。
「…もう、何してるの。水飲みな?」
可哀想ではあるが、それくらいしかできることはないので、私は淡々とそう言い、千晴のおぼんへと視線を向けた。
…が、そこには何故か水がなかった。
「水、持ってくるの忘れた」
「何やってんの…」
仕方ないので呆れながらも、私の水を千晴に差し出す。
しかし、それを千晴はじっと見つめて、受け取ろうとはしなかった。
…何故。
千晴に差し出された私の手が、しばらくその場に居続ける。
続く謎の時間に、疑念の視線を向けると、千晴は幼い子どものように笑った。
「飲ませて?先輩?」
甘えるように上目遣いで私を見る千晴に、ドクンッと心臓が跳ねる。



