「今日は1日大変だったけど、柚子とずっと一緒にいられたから苦ではなかったな…」
悠里くんの優しい声に、私の視線は今度は左隣へと向けられる。
私と目の合った悠里くんは優しく私に微笑んだ。
それからゆっくりと話を続けた。
「今年は受験生でもあるし、またこうやって一緒に勉強しよう。うちで」
「う、うん」
悠里くんのお誘いに、私は迷わず反射で頷く。
いつも通り優しくて、けれど私を射抜くどこかねだるような瞳は甘い。
そんな悠里くんに胸の奥がキューンと締め付けられた。
「べ、勉強、一緒にしよう。でも、悠里くん、多分推薦だよね?バスケで」
「まあ、その可能性もあるけど、勉強は普通に大事じゃん?柚子が見てくれるなら、一般で受験しても安泰だろうし」
「もちろん!私が見るからには悪いようにはしないよ…!」
「じゃあ、決まり。うちにまた勉強しに来て?姉ちゃんも里緒も〝お姫様〟て、柚子のこと呼んで気に入ってるし」
優しいいつもの悠里くんなのだが、一瞬だけ、その瞳から優しさが消える。
そしてその視線は私にではなく、私の向こう側に向けられた。
…千晴だ。
そもそも私を〝お姫様〟と言っていたのは、里緒ちゃんだけだったような?里奈さんは普通に名前で呼んでくれていた気がするけど…?
悠里くんのいつも通りなのだが、どこか様子の違う姿に首を捻る。
ーーーその時だった。



