「先輩」
そんな私に千晴が淡々と、だが、どこか甘い声音で声をかけてきた。
「もうこのカレー食べた?」
「い、いや、まだだけど…」
「そっか。美味しくできてるかな?これ、一緒に作るの楽しかったよね。俺、初めてちゃんと料理したけど、先輩と一緒だったから楽しかったなぁ」
「…は、はぁ」
戸惑う私に千晴がいつも通りの調子で話を続ける。
だが、私を見つめるその瞳はやはり甘く、焦がれるような熱を帯びており、私の頬にじんわりと熱が集まった。
「料理、結構楽しかったし、また一緒に作ろ?うちで。ね?」
「う、うん。でもその時は千夏ちゃんも誘おう。その方が心強いし」
「千夏?わかった。アイツ、先輩のこと好きだし、絶対喜ぶよ。〝お義姉様〟て、先輩のこと呼んで、もう義理の姉にしてるし」
どこかおかしそうに瞳を細め、そう言った千晴の視線が、私ではなく、私の向こう側に一瞬だけ向けられる。
すると、その視線を受けてなのか、悠里くんが徐に口を開いた。



