「せーんぱい」
数秒後、私を後ろから抱きしめてきた千晴によって、生徒たちが何故急に黙ったのかわかった。
全員、千晴を見ていたのだ。
「…ちょ、千晴!?」
突然の背後からの抱擁に、私は手元にあった計量カップの中身をその場にぶちまけた。
机と床が水浸しだ。
せっかく、寸分の狂いもなく計れていたのに、千晴のせいで台無しだ。
「あー。何やってんの、先輩」
確実に千晴が原因でこうなっているのに、千晴はこの惨状にただただおかしそうに笑っている。
その姿に腹が立って仕方がない。
「だっ、れのせいでこうなっていると…っ!」
怒りで肩を震わせながら千晴をギロリと睨むと、千晴は肩越しに顔を覗かせて、その綺麗な瞳を怪しく細めた。
「俺?」
こちらをまっすぐと見つめ、首を傾げる千晴に、ドクンッと心臓が跳ねる。
柔らかそうなふわふわの金髪が蛍光灯の光を受けて、キラキラと輝いて見える。
作り物のように一切の欠点のない完璧な顔立ちは息を呑むほど美しく、そこから作り出される笑顔は何よりも幻想的で、眩しい。
好きだと自覚してしまってからの千晴は以前にも増して、美しく感じた。
ゔぅ、目に毒すぎる…。



