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その日の放課後。
私は1人、風紀委員室で頭を抱えていた。
もう風紀委員の仕事は終わっている。
ここにいる必要はない。
だが、私はここから動けずにいた。
「…はぁ」
本日何度目かわからないため息が私から漏れる。
ふと窓に視線を向ければ、オレンジ色に染まった空が見え、時間の流れを感じた。
別れを…本当の気持ちを…私は結局、悠里くんに言えなかった。
朝、体操服を返した時も、昼、一緒に昼食を食べた時も、校内でたまたま会った時も。
いつでも言える機会はあったというのに。
言おうとするたびに喉の奥が熱くなって、言葉が出なかった。
今この瞬間も悠里くんは私と真剣に向き合い、まっすぐとした好意を抱き、私の彼氏でいてくれている。
そんな悠里くんを黙ったまま、裏切り続ける私は、なんて最低なのだろう。
ーーー言う、言う、絶対に言う。
心の中で何度も何度も言い聞かせるようにそう呟き、荷物をまとめると、私はやっと風紀委員室から出た。
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いつもより早く委員会活動が終わったため、帰るまでまだまだ時間がある。
普段なら図書室で本を読んだり、教室で勉強したりするところなのだが、今日の私は気がつけば体育館の扉の前に立っていた。
まるで何かに引き寄せられたかのように。
開け放たれた扉の向こうでは、もちろんバスケ部が部活をしている。
部員たちの声やボールの弾む音、床を蹴る音を耳に、私は体育館内をただぼんやりと見つめていた。



