推しに告白(嘘)されまして。




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その日の帰りももちろん雨が降っていた。
その為傘のない私は学校の置き傘を借り、1人で下駄箱にいた。

私の隣に悠里くんの姿はない。
いつもよりも部活が長くなるとのことで、今日は悠里くんと一緒に帰れないのだ。

たくさんの生徒たちが行き交う下駄箱で、私は1人、どんよりとした空を見上げた。

暗い空からザァザァと勢いよく雨の降る様が目に映る。
やはり今日は天気予報通りもう雨は止まなさそうだ。

空から傘へと視線を落とし、そっと傘を押し広げる。小さく鳴った開閉音を耳に、そのまま私は下駄箱からゆっくりと外へと踏み出した。

ーーーその時だった。

私の視界の端に、一瞬だけふわふわの金髪が入ってきた。

千晴だ。

一瞬、視界の端をかすめただけだったが、あの金髪が千晴だと私はすぐにわかった。
この学校であんな派手な頭で堂々としているやつなど、千晴しかいないからだ。

全く何度注意すれば、あの頭をやめられるのか。

私は大きくため息をついて、広げていた傘を一旦畳んだ。
それからあの金髪頭を探し、見つけると、ずんずんと力強い足取りで、そこへと向かった。



「千晴」

「あ、先輩じゃーん」



私に低い声で呼び止められ、千晴が嬉しそうにこちらを見る。

ふわふわの金髪に、ゆるゆるのネクタイ。
首元のボタンは止められていないし、学校指定のセーターも着ていない。
さらに耳にピアスまで光っており、全身あまりにも自由すぎる千晴に、私は眉間にシワを寄せた。
だが、そのシワはすぐに緩められた。
こんなにも雨が降っているのに、千晴の手には傘がなかったからだ。