「うん。悠里くんも?」
「うん、俺も。どこ行くの?よかったら一緒に行かない?」
「…うんっ」
悠里くんの提案に、私は思わず破顔した。
推しと一緒に少しでもいられるなんて、最高すぎる。
それから私たちは改めて一緒に移動を始めた。
どうやら悠里くんが向かっている教室と私が向かっている教室は近いらしい。
「だから確認してみたんだけど、違ったんだよね」
他愛のない会話の中で、悠里くんがおかしそうに笑う。
その姿があまりにも尊くて、私は瞳を細めながらも、何とか頷いた。
ああ、悠里くんという存在を産んでくれたお母様に感謝。
そのお母様を産んでくれたお母様にも感謝。
つまり、全てに感謝。
心の中で、手を合わせながらも、表ではいつも通りの表情を浮かべる。
そうこうしているうちに、私の教室の前までたどり着いた。
もう別れの時だ。
離れ難いと思いながらも、話を終えようと口を開いたが、私から言葉が発せられることはなかった。
悠里くんが変わらず、言葉を紡ぎ始めたからだ。
「この前、いい感じのカフェ見つけてさ。柚子と行きたいな、て思っちゃって。だからまた行かない?」
「う、うん。行きたい」
「やった。ありがとう」
柔らかく微笑む悠里くんに、ぎこちなく私は頷く。
とても嬉しいお誘いなのだが、何故、悠里くんは未だにここにいてくれるのだろうか。
私から離れようとせず、教室の前で話を続ける悠里くんに、私は首を捻った。
でも、まあ、いっか!
少しでも一緒にいられるのは嬉しいし!



