推しに告白(嘘)されまして。





「…はぁ」



本日何度目かわからないため息をつき、私は視線を下へと落とした。

私は悠里くんを推しているのだ。
どちらが好きなのか、と今の生徒たちの調子で詰め寄られても、もちろん悠里くんだと即答できる。
それだけ私の彼を推す想いは絶対だ。
だからこそ、悠里くんが私の彼氏なのだ。

だが、そう考えた時、ふと、頭の中に、ふわふわの金髪が過ぎった。
推しではなく、千晴の姿が一瞬だけ現れた。

何故?

突然の千晴登場に小首を傾げる。
それから胸の辺りがムズムズする感覚に気づき、私は眉間にシワを寄せた。

最近、こういうこと多い。
突然来るこの変な感覚はなんだ?やはり病気か?



「柚子」



うんうんと考える私に後ろから誰かが声をかける。
このかっこ良すぎるイケボは間違いなく悠里くんだ。
足を止めて、振り向けば、そこにはやはり悠里くんがいた。

窓から射す太陽の光を浴びて、キラキラと輝くサラサラの黒髪。
そこから覗く、整ったかっこ良すぎる顔。

私と目が合い、嬉しそうに細められた悠里くんの瞳に、先ほどまでの些細な悩みがぶっ飛んだ。

な、なんと眩しい存在なのだろうか。
世界の中心は彼であり、太陽の光は彼を照らすためのスポットライトだ。

悠里くんの登場に私の思考はすっかり悠里くんに奪われてしまった。



「柚子も移動教室?」



自然と私の横に並び、歩き始めた悠里くんと私も共に歩き始める。