推しに告白(嘘)されまして。





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その日の三限目は日本史だった。
私は椅子に姿勢よく座り、先生の話を真剣に聞きながらも、ノートをとっていた。
もちろん今の私の格好は、悠里くんの体操服だ。
胸元にある〝沢村〟と刺繍された二文字があまりにも眩しすぎる。

恥ずかしさ、尊さ、眩しさ、喜び。
いろいろな感情を抱えて、それでも私は平然と学校生活を送っていた。



「…で、ここはこうなったわけだ。じゃあ、質問するぞー、お前らー」



黒板の前に立ち、気だるげに喋り続けていた、30代前半くらいの男性教師、秋田先生がチョークを持ったまま、クラス中に視線を向ける。
その視線に、生徒たちは背筋を伸ばした。

うちのクラスは進学科だ。
誰が当てられても、まあ、答えられるだろう。
当然、私も、だ。

秋田先生に質問されても、すぐに答えられるように気を引き締める。
すると、たまたま秋田先生と目が合った。



「じゃあ、鉄崎…」



そこまで言って、秋田先生の視線がどこかへ移動する。



「…あ?沢村?お前、いつ沢村になったんだよ?結婚したんか?アイツと」



そして、私の胸元を見て、おかしそうに笑った。



「ち、違います!借りているだけです!」



秋田先生からのまさかの指摘に、私はガターンッ!と勢いよく席から立ち、全力で否定する。
そんな私に秋田先生は、「じゃあ、未来の沢村に質問するぞー」と、ゆるく私に質問を始めたのだった。