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朝、私は駅で1人絶望していた。
先ほどまで晴れていた空が、どんよりとした雲でいっぱいになっていたからだ。
しかもその雲からザァザァと勢いよく雨まで降っている。
最悪だ。傘持って来てない。
天気予報も見ず、のうのうとここまで来た先ほどまでの自分を恨む。
「…」
空を睨んでみたはいいものの、もちろんそれだけで天気が変わるわけもなく。
仕方なくスマホを見れば、今日は一日中雨予報でこの雨が止むことはないようだった。
…仕方ない。
心の中でそう呟き、私は駅内から学校へと駆け出した。
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「はぁ、はぁ」
やっとの思いで、学校までたどり着いた私は下駄箱前で、両膝を押さえていた。
雨の中ここまで駆け抜けてきた為、全身びしょ濡れだ。
さ、寒い…。
三月とはいえ、まだまだ気温は低いので、普通に寒い。
私は寒さに震えながらも、とりあえずスカートの端を掴み水を絞った。
それからブレザーを脱いで同じように絞る。
あとはある程度絞り終わった制服をハンカチで拭きながらも、私は考えた。
とりあえず、このまま保健室へ行って、体操服を借りなければ。
このままでは風邪を引く。
「…柚子?」
そんな私に後ろからとんでもなく素敵な声が声をかけてきた。
この声は間違いなく、私の推し、悠里くんの声だ。



