「ぜ、全然大丈夫!謝らないで!悠里くんと電話できて、私、すごく嬉しいから…」
スマホの向こう側にいる悠里くんに、私はついデレデレしてしまう。
誰かに見られていないと思うと、表情筋に力が入らない。
『そっか…。そう言ってもらえてなんか嬉しいな。俺もだから…』
嬉しそうだが、照れくさそうな悠里くんの声に、私は悶絶した。
全てを兼ね備えすぎている。
『あのさ、直接お礼が言いたくて電話したんだよね。すごく美味しかったよ、本当にありがとう、柚子』
「…う、うん。ど、どういたしまして」
『柚子、料理苦手じゃん?それなのに俺のわがままでチョコ作らせて、悪いな、とも思ってて…。でもやっぱり、手作りもらえるって特別な感じがしてさ』
「…うん」
『特別って嬉しいね、やっぱり』
耳が幸せすぎる。
私の耳に届く優しい悠里くんの声はどこか甘く、体の奥底からじーんと私を暖める。
ふわふわとまるで夢でもみているかのようだ。
「私にとって悠里くんは特別で大切な存在だよ。それを伝えるためだったら、苦手なことでも頑張れるから」
幸せを噛み締めながら思っていることを口にすると、柔らかい吐息がスマホから聞こえた。
悠里くんはスマホの向こう側で、柔らかく笑ってくれているのだろうか。
『…ありがとう、柚子』
聞こえてきた甘い声に私は気を失いそうになった。
危険すぎる声だ。
『ねぇ、柚子』
「ん?」
『好きだよ』
「…っ!」
推しからの突然の告白にブワッと私の周りに色とりどりの花が咲く。
ゴーン、ゴーンと遠くから鐘の音が聞こえ、今まさに幸せの絶頂にいる私を祝福している気がした。
好き、とは何と素敵な二文字なのだろうか。
「私も好きだよ」
好きだー!と叫びたい気持ちを何とか抑えて、私は柔らかく囁いた。
その後、私たちは他愛のない話を、お互いが眠るまで続けた。
悠里くんの声を聞きながら眠りにつけるとは、私はなんて幸せ者なのだろうか。



